リハビリが成功するコツ

リハビリにも種類がある

病気や怪我で手足が動かなくなった時、生活の質(QOL)の向上や機能の回復を図るためにリハビリというものを行います。QOLの向上とは、機能の回復が不可能だった場合に体の使い方や道具を利用して生活に支障がないよう改善していくものです。

歩行の訓練などをしたところで最終的に元通りにはならないにせよ、生活できるように工夫していく事が目的でありゴールなのです。

今日はこちらではなく、機能の回復を目指すリハビリのお話☝️

退院後歩けなくなったおばあちゃん

私の訪問リハビリ時代の体験談ですが、手術のために1か月入院していた80代のおばあちゃんが退院後歩けなくなってしまったということで依頼がきました。家は以前からバリアフリーだったので、身の回りのことは自分でなんでもできていました。それが退院後、まずベッドから起き上がれない、歩行器があってギリギリという生活になってしまいすっかり落ち込んでしまっているとのこと。

筋力は普段どんなに鍛えている人でも4日間寝たきりでいるとたちまち落ちてきます。おばあちゃんは整形外科的な手術で入院していたのではないので、気持ち的には元の生活に戻る気満々だったのです。よくあることなのですが、高齢者が入院して懸念されるのは結局入院を機に寝たきりになることです。ここから認知症もスタートします。

私が最初にお会いした時もとても悲しそうでした。

認知症ではないので話が理解できます。こういう方にリハビリをする時は、ゴールの設定と、どういう段階を経てゴールにたどり着くのかをキチンと説明するとリハビリが驚くほどスムーズに進みます。このおばあちゃんのゴールは『退院前と同じく、自分のことは自分でできるようになりたい』『補助具なしで歩きたい』ということでした。

まず話を聞くとあれこれできなくなった不満、入院のせいでこんなことになってしまったというちょっとした恨み節が出てきます。そもそもの病気は治してもらったというのに…お医者さんが若干気の毒になりますが、それは置いておいて。

歩けるようになるためのリハビリ

おばあちゃんの補助具はコの字型でキャスターがついているタイプです。このタイプの歩行器を使っているということは『前に支えがないと立っていられない』ということ。

これは足の筋力をいきなりつける試みをするよりも、今現状『前の支えが必須』であることを本人に伝えていきます。

歩くという動作は片足立ちの連続です。

それにはまずその場で片足立ちができることが大前提。そして前側の補助具を取るためには横の支えで片足立ちと足踏みをできることが必要になります。横の支えで立ち上がり、片足立ちができ、足踏みができるようになることが最初のゴールです。前に進むのはその次の段階。

高齢者用のベッドには立ち上がるための手すりがついているのでこれを使って練習をします。筋力が落ちていること、できないことがたくさんあることは当たり前なので不要なチェックはしません。本人の意思を尊重し、やる気を出してもらいます。実際、おばあちゃんはゴールが見えて前向きになりました。これならできるかもしれない、という希望を持つことは大切です。私はリハビリ中、前に倒れることがないよう手を貸し見守ります。

横の支えで片足立ち、足踏みができるようになったら次は私が手を取り歩く練習をします。最初は私が前に立ち両手を添えますが、この頃になると全体重を預けるようなことはありません。転ばないように、怖くないように手を置いているという感じ。

ほとんど体重を預けていないと感じたところで次は私がおばあちゃんの横につき片手で支えます。いきなり杖を使のではなく人の手の方がすぐフォローできるのでこのような段階を踏みます。

前に支えがない状態で歩けるということにおばあちゃんは感動していました。

こうやって自信をつけていきます。声かけもとても重要。お年寄り扱いするのではなく『どう?怖くなさそうならちょっと杖使ってみようか』など、本人にできそうか、やってみたいか確認します。この辺は瀬戸際の攻防になるのですが、私がオッケーを出したのに杖を使って転んで骨折、となったらせっかく築いた信頼関係も崩れ、事故報告、損害賠償など全て台無しとなります。でも、だからといっていつまでも患者さんでいるようではいけないのです。

最悪のパターンも想像しながら、杖を使って生活してもらいます。杖がどんなものか、移動はどの範囲かを確認して、段差や床の素材についても話し合います。

一番動きが悪い朝方はまず立ち上がりと足踏み、足指の体操のウォーミングアップをしてから始めるように指導します。その後、おばあちゃんはメキメキと歩けるようになり最終的に杖なしで以前と同じ生活を送れるようになりました。ここまで3か月。訪問リハビリは本来同意書の有効期限が6か月ですからとても成績優秀な方でした。それ以降も必要な方はお医者さんの同意のもと続けることになるのですが、おばあちゃんには明確なゴールがあり、達成でき次第自分の生活に戻りたいという強い意志がありました。私はこのおばあちゃんの毅然とした振る舞いも大好きでしたね。

接骨院的にはいつまでもご利用してくださる患者さんの方がありがたいのですが、本来リハビリは良きところで卒業してもらって、毎日楽しく、忙しく生活していただける方が施術者冥利に尽きるのです。認知症などで話が理解できない場合は難しいですが、このおばあちゃんのように話がわかる場合、初診で説明を理解した時点でもう半分くらいゴールに近づいているんです。足腰の筋トレも必要ですが歩行のメカニズムを理解すれば、何故今この状態なのかがわかるのです。筋力低下により立てない、歩けない、ことに全神経が集中しがちですが、それよりも最初に『何故、前に支えが必要になってしまったか?』を考えます。

リハビリを成功させるにはコツが必要

ちなみに先程から『訪問リハビリ』と言っていますが私は鍼灸マッサージ師なので正しくは『訪問鍼灸マッサージ』です。歩行の訓練はどちらかというとPTさんの分野でしたがとりあえずなんでもやっていましたね。保険の金額や施術時間も、訪問リハビリとマッサージだと違うのですが、施術内容はリンクしあっています。

この方法は退院後のリハビリだけでなく、歳を取ってきて足腰が弱くなった方、歩行がおぼつかなくなった方にも使えると思います。是非、ご自身やご家族で活用してみてくださいね☺︎

〜リラクゼーションと鍼灸あん摩マッサージの家〜しろたえのHPはコチラから☆

同じゴールに向かって一緒に頑張ることがリハビリの第一歩✨