『クッシング症候群』による肥満

美容系のケアで疾患が隠れてしまう

クッシング症候群は体内のコルチゾールが過剰になるホルモンの疾患です。男性ホルモンの影響で多毛といった症状もあり、特徴的な外見を持つ指定難病です。

原因は複数あり、検査しないとわかりません。

私は、おそらくクッシング症候群であろうお客様を担当していたことがあります。特徴の全てを兼ね備えていたので一度内分泌科で検査をして欲しいと話しました。

私が診断名を言うのは違法ですし乾癬も発症していたので、かかりつけ医は何故気がつかないのか?と常々思っていました。

しかし、おそらく診察では体を、素肌をそんなに見ない。

私はオイルマッサージをしているので肌をよく見ています。このお客様は多毛症でもありました。永久脱毛してしまっているので手足をチラッと見ただけではおそらく気づかないでしょう。この永久脱毛だって、最初にアゴの周りをしたというから、これはただ毛深いだけではなく、ホルモンに何らかの問題があるのでは?と思いました。

早く検査をして欲しいと思い、何度か促しましたが聞く耳持たず。健康や美容に関心がある割に右から左へ受け流してしまうのです。おそらく医師を信頼してのことでしょう。

そのうち、乾癬は悪化の一途を辿り、大腿部や上腕の筋肉の異様な細さ、筋力低下も目立ってきました。さらに体幹の近くの筋肉が萎縮するので末端が頑張ります。その影響で前腕とふくらはぎは酷使によりガチガチに。

顔とお腹、肩に集中して脂肪が蓄積され上向きではかなり息苦しそうです。おそらく、首についた脂肪が喉を圧迫しているのです。しかし、長年のかかりつけ医に乾癬の薬を出してもらっているからいいのだ、といった様子。

決定的だと思ったのがお腹に赤い縦線が走っていたこと。

クッシング症候群ではお腹に赤色皮下線条が出るのも特徴なのです。これはただの思い過ごしではなく、本当のクッシング症候群だと思いました。

クッシング症候群の原因と治療は色々とあります。腫瘍が原因だったら手術も必要になります。マッサージを受けることは構いませんが、見てみぬふりはいかがなものか?と思い、色々な方法で検査を勧めました。

体がイマイチ良くならない理由は『的外れな療法を試している』からかもしれないんです。女性ホルモンを整える精油でボディケアしても、疾患を治すほどの力はありません。鍼灸マッサージ師の私ができることは鍼灸マッサージで治るもののみ。

病気を理解して、病状をコントロールしている方とそのままにしている方ではアプローチの仕方が変わります。

エステサロンの120分は高額です。その時間で何も状態が良くならないのは他に原因がある、私はそう思います。もともと腰痛で来られていたので、マッサージの技術に問題があったら腰痛は治っていないはず。

腰が一時的に良くなるから月に何回も通っているのです。では、大元の太り過ぎをどうにかするには?と考えた時に疾患を疑います。

余計なことを言わずに黙ってマッサージしていればいいのかもしれませんが、もし何か施術中や後に急変があったらどうするのか?これだけ太っていれば心臓にも相当負担がかかっているだろうに。

何でもかんでも病気にしてしまうのはいかがなものか?と常々思っておりますが、時として本当に病気が隠れている場合があるんです。そういう時に限って聞き流されてしまうんですよね。

こんな話を聞いたことがあります。クッシング症候群をよく知るお医者さんが、電車に乗っている時、偶然クッシング症候群の女性を見かけ声をかけたそうです。ただ太っているのと見分けつけるのが難しいので本人は気づいていませんでした。医師の発見により検査をし治療を受けることができ感謝されたのだそうです。

私のお客さんの場合、まず永久脱毛により疾患が隠れてしまっています。エステやリラクゼーション系のスタッフに医療現場での経験や知識はありませんから、代謝アップすれば痩せる、疲れが溜まる前にくれば今より良くなる、と本気で思っています。気づくことはできません。

内分泌科で検査しないと診断名は出ませんので、多毛や中心性肥満、近位筋萎縮(太ももや二の腕の筋力低下)により外見の変化に異変を感じた時、参考にしてみてください。珍しい疾患ではありますが、ホルモンの異常がベースにあれば食事制限しても肥満は解消しません。美容、健康へのアプローチの前にまずは検査と治療をオススメします。