国家試験の思い出

鍼灸あマ師の国家試験が近づいてきましたね。今年の受験生は去年まともに勉強できているか心配です。私が受けた時は10年前、東日本大震災の起こった年でした。

私の場合、震災の影響もあったけど、それ以前に在学中のお勉強が苦痛で大変でした。私は座学も実技も、お勉強というものが苦手です。一回で覚えられないし、暗記するという事が何よりもできない。よってテストで点数が取れない、ということです。点数の取れないテストのために勉強する苦痛。大トリである国家試験前には帯状疱疹に罹る始末でした。

国家試験前には学校の試験で80%の正解率でないと難しいと言われており、私は入学から一貫して60%をキープしていました。テストが難しかろうが優しかろうが常に60%しか取れない。自分でも不思議でした。そのため3年生では『朝練』という合格が怪しい人達が集まり特訓する会にノミネートされていました。しかし、帯状疱疹に罹りこの朝練にすら参加できず、授業では相変わらず眠気に勝てない。もう無理なんでないか?と合格が危ぶまれる生徒でした。

帯状疱疹は右肩から脇にかけて。それはもう激痛でした。これが国試に被るという悲劇。とはいえ、これが理由で落ちたとも言えない完成度。今年は無理かもなぁ…と誰もが思っていたと思います。今年というか、鍼灸の国試は基本その年で受からないとまず翌年受かることはないと言われていました。私はそうしたら速やかに音響の業界に戻ろうと思っていました。そして国試当日を迎えます。私はここで最高の選択をしました。

当日は電車の遅延など、トラブルを見越して国試が行われる会場の近くに泊まります。この時、特別仲が良いわけでもなかった、日常的につるんでいるわけでもなかったメンバーで同じホテルを取ったのです。私を含め4人。ものすごく頭のいい、おそらく首席だった19歳の男の子と、穏やかで堅実な感じの20代の男の子、隣の席だったギャル風の、でも記憶力がとても良い19歳の女の子。やたら若い子たちと一緒に巣鴨のホテルを取ったのです。

私以外、絶対に受かる人達でしたがみんなおのおの緊張していました。私は痛みで気が遠のいていて、夜ご飯の大戸屋では『もう私のことは置いていっていいよ…』と言いながら定食だけは完食するというしょうもない大人でした。

若い子たちは不安と緊張、私は痛みと諦め。みんな頭がおかしくなっていました。私に至ってはみんな笑うしかない、と言った感じで『とりあえずこれだけ覚えましょう!』と言ってチラシの裏にポイントのみをまとめて渡してくれました。

ちなみにこの時帯状疱疹自体は回復に向かっており『帯状疱疹ってカサブタになって終わりなんだね』と一言ポロリとこぼしたのですが、これが授業でもやらずに国試で出た引っかけ問題でしたので、後にみんなに『おかげで一点取れた!』と感謝されました。

私はみんながまとめてくれたチラシの裏を夜ずっと眺めて覚えました。もう時間がないから丸暗記です。

そして当日。緊張も何も、まだ脇から肩にかけて激痛。本当にダメかもしれないが、万が一受かった時のことも考えて臨みます。手持ちの武器は若者からもらったチラシの裏と己の体力のみ。後日談ではこの年の試験は異様に優しかったらしく、みんなとっとと解答を終えて部屋から出ていきました。私には優しいか優しくないかもわかりません。

とりあえず山のような問題を前から一回解き、それを次は後ろから解く。もう一度前から解いて後ろから解くという謎の方式で結局時間目一杯、最後の一人になっていました。

ここまでくると『後悔なきよう、知らない問題も凝視して頭をフル回転させようではないか』という方向に変わっていました。もはやイマジネーションの世界。

国試が終わると出口にすでに解答を配っているというミラクル。あれは何なんでしょう?私は共に戦った若者たちと答え合わせをして、結局合格ラインの60%をちょっと超えていた事を確認できました。最初から最後まで60%という有終の美を飾りました。

紛れもなく、私が試験を合格したのはあの優秀で心優しい若者たちのおかげだったと10年経った今も思っています。ここでの学びですが、試験勉強を教わるなら若い子たちに限ります。専門学校は他にも私と同年代かそれ以上の優秀な方々がたくさんいましたが、やはり丸暗記と要領のよさ、ノリの軽さでは若者が一番。私が大戸屋で絶望していても若者は諦めるな、と言っていたんです。すごい力ですよ。

この年の試験はとにかく優く、気合いを入れて学習していた人達には相当物足りなかったのだそうです。私は答え合わせの時、いつもトップの成績だった友人に『あー、3問間違えた!悔しい!』と言われましたが、就職後同じ訪問先の老人ホームでバッタリ会い(こんな成績の悪い私と結局就職先は同じなのか…)と人生の不思議を感じたものです。

10年経っても、忘れっぽい私が鮮明に覚えている国家試験の思い出。一旦社会に出て専門に通い、後がない方はぜひ参考にしてみてください。若者のパワーはすごいですよ。

最後に、あの時チラシの裏にいっぱいポイントを書いてくれたシオちゃん、カズマくん、ハラシマくん、本当にあの時はありがとう!

それではまた♫

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