訪問リハビリの意味
私は資格を取って最初に訪問リハビリの仕事に就いたので、主に運動療法や内科疾患が専門分野でした。実際、鍼灸マッサージ師としては専門外というか(^_^;)私のやりたかった事ではなかったのですが、脳梗塞、交通事故の後遺症で半身不随、難病の患者さんに出会い、人生の上でも大変貴重な経験と勉強をさせていただきました。
リハビリについても勉強しましたが、何しろ新卒で専門外だったため(これで合っているのか?)(これで治るのか?)と自問自答の日々でした。
訪問で与えられている時間は僅か15分。それを毎日、もしくは週3~4日行うのですが、こんな短い時間で良くなっていくのか心底疑問でした。接骨院での施術ですら、私にとっては短く、もっと全部やってあげたい!せっかく来てくれているんだから…という思いが強かったので今リラクゼーションの仕事に落ち着いているわけです。
1日24時間中、固まっている時間が23時間45分。お手洗いに行く、病院に行く、などで多少の動きはあるのでしょうが、そこの動きを改善するための施術をたった15分でやれなんて、ほぼ魔法に近い感じです(泣)
私は自分が何をしているのかしばしばわからなくなり、まずその意味を調べました。(そんな事より手技の練習をしろ、という気もしますが)まず、リハビリという言葉は『リ+ハビュラス』という言葉の組み合わせで生まれました。意味は『もう一度、あるべき姿に戻る』という事です。ですから、今ある運動機能を高めるためのものではなく、失った機能を取り戻していこう、という意味が込められているのです。そうすると、ますます15分の施術ではできない気持ちになります。基本的に、訪問リハビリをするということは『自力で歩行が不可能』な患者さんのためのもの。なぜ不可能か?共通点は麻痺なのです。
『麻痺した手足を、麻痺してない時に近づけるために私は訪れている』という事なのです。
麻痺した手足は、筋肉が拘縮しているか弛緩しているかのどちらかに、関節の動きが無くなっている状態を足したもの。なぜそうなっているかというと、脳がダメージを負っており命令できなくなっているからです。筋肉が動かないので関節も動かない。
筋肉が動かなければ血液の循環は悪くなります。関節も動かなければ固まります。ここで、ちょっと自分のやってる事の意味が見出せました。『なるほど、自分はマッサージして血液を流してあげているのか』と。ただ、それが気持ち良いのものか、本当に流れが改善して楽になっているのかはわかりません。
もう一つ、リハビリの定義と似ていてQOL(クオリティ オブ ライフ)という言葉があります。これは『生活の質をあげる』という意味で、体の機能がダメになってもそれを補う道具などを積極的に活用して不自由のない生活を送れるようにするということです。
ですから、動かない関節に対してリハビリに明け暮れる生活ではなく、動かないから逆にこうやって過ごそうと発想の転換をしていく、ということです。
私はこの考えいいな、と思いました。ただ、調べていくと『QOL向上だけを目指すのもどうかと思う』とうたっている人もいて、そこも納得してしまうのですが。
私は『脳が指令を出せない以上、状況が良くなることに限界がある』と思いました。しかも、そこは個人差があると。
以前、脳梗塞になった赤ちゃんの番組を観ました。赤ちゃんは大人と違って、自分の置かれている状況をわかっていませんから半身麻痺になっている事もわからず、笑顔で手足をジタバタしています。本当に半分動かない様は私が診ている患者さん達と同じでした。
赤ちゃんすぎてリハビリもありません。さらなる血栓ができないように治療しています。
数日経って、片方の足だけ動くようになりました。私には衝撃的です。いくら赤ちゃんでも、一旦動かなくなった体がそうやって治ることあるの⁈と思いました。神経は特に、一回壊れたら回復する事はないはずなのです。もし、回復する事があるとしたらダメージを負ってから早いうちに、動かなくても脳から司令を送り続けることかなと思います。
パルス治療や、EMS(腹筋に貼ってシックスパック作るような、筋肉を他動的に動かす機械)では脳から命令して動かしているわけではないので一時的なものです。それでも麻痺している患者さんには一定の効果が認められますから、自分の脳から筋肉に働きかけるって凄い事なんですよね。
そして話を戻すと、結果、リハビリを本気でするなら『実際に歩く・動くなど出来るだけ自力で行ってもらい、その前後に関節や筋肉のマッサージをする』という事かなと思います。さらには、自分の意思で動くことがポイントになるかと思います。一番良いのは日常生活を送る事ですね。できない事は道具を使ったり、人の手を借りるといいと思います。
ダイエットもそうですが、他力では底が見えているんですね。患者さん本人の意識と、私たち施術者も本当に患者さんのためになる事やっていく必要があります。
本当にそれでリハビリになるのか?患者さんは良くなっていくのか?私たち施術者はビジネスの前に考えなければなりません。