肩凝りの原因はネックレス
どこかが痛い時、人は年齢のせいにしたり大殺界のせいにしたりします。ひいては『呪われているんじゃないか?』と見えないものへと責任が移り、神社でお祓いに行く事すらあります。今年は特に世界が激変してしまったのでその変化に対応するべくみんなストレスと闘っていると思うのです。
ストレスがあると鍼灸マッサージでいくら筋肉を緩めてもその場限りです。ストレスの大元が解消しない限り、やはり戻ってしまうというか限度があります。ただ、施術によって一瞬でも緊張が和らげば、よし、頑張ろう!と解決に向けて前向きになったり、よく眠れるようになる事で糸口に繋がるきっかけとなることはあると思います。
『木を見て森を見ず』ということわざがありますが『細部を見すぎて全体が見えなくなっている様子』を指します。ストレスと体の痛み、凝り、疲れといったいった大きな面で見えてくる不調は言わば『森』。私達セラピストはまず森を見せられているのですが、森から原因である『木』を探さなければなりません。しかし、ことわざの通り、木にこだわると今度は全体である森が見えなくなってしまう。ここが難しいところです。ことわざでは全体を見る必要性を説いていますが、治療では森と木を交互に見る必要があります。
キャンバスに絵を描く時、しばしば遠く離れて自分の絵を眺めては近寄って、細かな修正を加えていきます。ずっと近くで丁寧に細かく描き込んでも、離れてみると思いっきり歪んでいたり、真っ直ぐ描いていたつもりが曲がっていた!という事が多いのです。こうやってバランスを取らないと良い絵が完成しないところは治療と似ています。
では、その細部はどうやって見つけるのか?という事なのですが、私達は勉強をして色々な知識を元に仮説を立てます。ですから、問診である程度目星がつくのですが、これではまだ『森に名前がついた』程度なのです。その状態で『ココとココが悪いから解しましょう』とポイントを絞ったところで、若干伸びてる雑草を取っ払った程度にしかなっていないのです。怪我ならば明らかに折れてる木を見つけられますが、ストレスや日常の姿勢が影響しているとそう簡単には見つかりません。
できれば一発で治る魔法をかけてあげたいところですが、この細部を発見する作業というのが実際には根治。地味で目立たないけれど魔法よりも強力なのです。
さて、人間には『体性感覚』という触覚、圧覚、痛覚、温覚、冷覚なるものがあり、自分で選ばなくても自動的に感じ取ることができます。例えば、背中を指圧で押されている時、指2本で押されているのか1本で押されているのか、幅が狭くなればなるほどわからなくなります。こんなこと普段考えてもみないことなので正に無意識、全自動で瞬時に処理されているという事なのですが、これは触覚において『粗大』と『精細』にわかれているからです。
人はみな、パンツを履いているかと思いますが『今自分はパンツを履いていて、その存在を常に感じている』という人はあまりいないかと思います。これは粗大な触覚が働いているおかげ。いちいちパンツの存在を感じていたらさぞかし鬱陶しいことでしょう。
これを踏まえて、もし肩凝りが酷いという人に仮説を立てるとしたら、私はネックレスや洋服を疑ってもいいと思うのです。本人は粗大な触覚に守られて気づいていなくても、ネックレスをつけていればチャームのついている前方向に自然と首が傾くと思います。重さは関係ありません。特に『毎日つけている方』『毎日つけることにした方』は注意してみて欲しいです。お出掛けの1日だけならおそらく大丈夫です。
またイメージチェンジを図り、服装を変えた方。肩に紐がかかるデザインだったり、どこかを固定する感じの服を着るようになった方。女性が常日頃身につけているブラジャーも、粗大な触覚のおかげで気にせず付けていられますが、あれだけしっかり肋骨部分をホールドされていると、付けなくて済む男性よりも可動域制限が出てしまうのは当然なのです。ちなみに、特にホックの部分を中心に動きに制限が出ます。
ですから、生活習慣、仕事、姿勢以外にももしかしたら、そのお気に入りのネックレスが肩凝りの原因になっていることもあるのです。これはセラピストである私達はなかなか気づいてあげられないかもしれません。私は時々不思議に思って『何でこんなところが硬いのですか?』と聞くことがあります。お客様からしたら(何でそれがわからないのですか?)と頼りなく思ってしまうかもしれませんが、問診で年齢、職業、痛くなった経過を聞いても不思議なこと、わからないことはたくさんありまして、ここは原因解明ために恥を忍んで聞いているのです。
そうすると、早く治りたい、治る気マンマンのお客様は特に『自分でもどうしてこんなことに…?』と探る作業に入ります。そうすると日常生活でちょっとだけ変化したことに気づき、それが原因であることを発見できるのです。
接骨院で勤めていた時『両耳の後ろがピンポイントで痛い』というおばあちゃんがお越しになったことがあります。私は問診した上で『申し訳ないですが、そういう症状に出会ったことがなく原因はわかりません…』とギブアップしました。すると後日来院され『原因がわかりました。新しくしたメガネのツルが刺さっていたみたいです』と報告してくれました。ギブアップして良かった、と心から思いました。おばあちゃんだからって眼精疲労だのヘルニアだの、何でも名前をつければいいというものではなく、本当にごくありふれた物が原因だったということは多々あるのです。メガネも、視力が悪い人にとっては顔の一部ですからそれが耳や鼻にかかっていることも忘れてしまうんですよね。
いつも自分が身につけている物を今一度見直してみてください。靴を変えた、服を変えた、アクセサリーを変えた、それらが知らぬ間に痛みの原因となっていることがあります。どうでしょう?木を探すことの何て地味な作業…でも、これでお客様が痛みから解放されたら私達は充分幸せなのです\(^-^)/