ストレスと鍼灸

今、ストレスに関する神経伝達物質と鍼灸の効果について調べています。何度か勉強会に参加しようかと思っていたのですが、なかなか学びたい分野と巡り会えず、自分で調べてどこか良きところに着地点を見つけるしかないなと思っています。学者でもないですし、物質についてマウスを使った研究などできません。本当は、鍼灸がそれらの化学物質に間接的にでも働きかける事は可能か?知りたいのです。

ブログを見ていると『我が治療院はそっち方面の治療に特化しています!』とハッキリ申している鍼灸治療院がいっぱいあるのですが、つまりは鍼灸が自律神経を調節しているテイで先生がそういうツボに鍼を打つという事なのです。私が考えているのはその前の話。『鍼灸治療が具体的に神経伝達物質に働きかける事は可能なのか?』を知りたいのです。背中はストレスの影響を受けやすい場所ではありますが、それはやはり背中に痛みなどの主訴がある事、圧痛がある事でアプローチの対象としています。でも『ストレスの強い状況に置かれている人』のストレス緩和に鍼灸は役立つのか?という事です。

ER緊急救命室Ⅵに、主人公のカーター先生が過去に巻き込まれた事件によりPTSD(心的外傷後ストレス障害)の状態になる話があります。そのストレスから逃れようと、病院の外傷室でフェンタニル(麻酔や鎮痛、疼痛緩和の目的で利用される合成オピオイド。麻薬に指定される)を自分で打つのですがそれを見られてしまいます。彼を救おうとする医師達の連携でカーター先生は医師専門の薬物リハビリ施設へ入ることになります。

こんな施設があって、人生のやり直しの機会を与えてくれるなんて、海外の行き届いたケアに感心してしまいましたが、リハビリを終え病院に戻った時に、上司であるウィーバー先生が『継続的にケアするのに鍼も良いと聞いた事があるわ』と紹介していたのです。

こんな緊急救命室で働く先生が鍼をオススメするとは!と驚きました。カーター先生は素直にそれに従って鍼を受けているシーンもありました。しかも、よく効いて喜んでいるのです。カーター先生は以前事件で統合失調症の入院患者に脇腹を刺されてしまいました。鍼治療のシーンでは腰に打っている様子でしたが、リハビリ後腰痛に悩んでいる風ではなかったし、鍼治療が出てくる事もこれまでありませんでした。何より第一線で働くお医者さんと鍼治療はかけ離れた場所にあるというか、お医者さんは西洋医学ですのでむしろ東洋医学である鍼灸は胡散臭くて話にならないと思っているはずなのです。

ドラマとはいえ、ERは現役のお医者さんが監修しているため、そこに鍼が出てきてお医者さんを助けている姿に私は衝撃を受けました。

それ以降、折に触れ調べるものの決定打となる治療法があるわけでもなく、やはり『自律神経の調節に鍼灸治療が役に立つ』くらいに留まってしまいます。

カーター先生が立ち直るプロセスとして、まずフェンタニルを断つ事、過去の事件を自分の中で正しく消化する事などが段階的に必要になります。これはきっと、重いストレスに自ら対峙する事を意味するのです。そこから逃げたらやり直しは不可能になってしまう。

ストレスに関係する神経伝達物質といえば、ノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミンですが、ノルアドレナリン、ドーパミンの過剰を防ぐためにセロトニンがあります。ホルモンは血液を介して対象となる臓器に働きかけるものですが、神経伝達物質は脳にある受容体に働きかけるものです。よく、セロトニンが増えると心の安定に繋がると言いますが、バランスを取る役割なのでコレ単独で増えてメリットがあるのかは謎です。私はどちらかというと心の安定にはドーパミンの方を上手く調節した方が良いんではないか?と思っています。

統合失調症の方はドーパミン過剰でADHDの方はドーパミンが不足しているといいます。どちらも動きや感情表現が激しいので、見た感じは『過剰』に見えますが違うのです。ドーパミンは経路の異なる神経を辿って色々な作用をします。『報酬系』と言って何かを達成した時の喜びの感情、感覚器からの情報をまとめて整理する(ADHDの方はこれが苦手)など。経路によって過不足が生じた時に病態となって現れます。重いストレスがかかった時、きっとこういう伝達物質が影響受け、キャパを超えた時に何かで補おうと薬物に走ってしまったりするのだと思うのです。私はこの『重いストレス』に対して鍼灸が一役買ってくれまいか、と思っているのです。

夢物語ですが、ドーパミンのコントロールを鍼灸でできたらいいんじゃないか、と思うのです。

そこで、どこに鍼を打ったらドーパミンを調節できそうか?ということなのです。頭だからって頭に打って効果が出るとは思えないというか、ひょっとして頭に打って電気でも流すのか?と思いましたが、硬い頭蓋骨に覆われているのですからどう考えても何の刺激も到達しないと思うのです。むしろ到達したら怖い。

では首?とも思いましたが首に鍼は自分でもよく刺しますが、首が治って終わりです。ここで東洋医学でも出そうものなら今度は『気』が登場してくるので、神経伝達物質の存在が通用しないのです。前回紹介したジストニア性痙性斜頸の患者さんも、元は抗精神薬の影響ですからベースは精神の病。実は頭に電気はこの方の時にとっくにやったのです。案の定、特に何も起こらなかったのですが。

ストレスに対しては強い人、弱い人はいますし、思いもかけないところから降り注ぐこともあります。転んで膝を怪我するのと一緒で心も怪我することがあるという事。ただ、心の怪我は血が流れるわけでも、青タンができるわけでもないので周りが気づき難いのです。

ストレスを『心の怪我』と考えた時に真っ先に手当てできるのは友達や家族の思いやりになるのかもしれません。先程話したカーター先生は、恩師であるベントン先生にリハビリ施設に連れて行かれる際、カッとなって抵抗し殴ってしまいます。しかし『何回殴ってもいいから車に乗れ』と言って諦めませんでした。こういう人が周りにいるかどうか。

転んで怪我した人を助けるように、手を差し伸べられたらいいですね。今年の7月は九州が大変な災害に遭っています。今ではもう復興が進んでいるかと思いますが、去年の千葉の台風の後始末だってまだ残っているくらいですから、風景が少しずつ元に戻ろうとも、被災した方々のストレスはまだ残っていると思います。ボランティアの方や自衛隊の方の助けと共に鍼灸治療も活躍できたら本望です。

今回は対人関係などの個人に関わるストレスというより、避けて通れないような大きなストレスのお話でした。引き続き研究を続けていきたいと思います。

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今年は特に全てにおいて不安定。誰にも先が読めない