もも前側と外側の強烈な痛み
両側の太腿前面と外側、スネとふくらはぎ、足裏、この一帯がジリジリ、キリキリ、火を噴いているような痛みを発している。姿勢、時間帯関係なく痛みとりあえずこぶしで叩くくらいしか対処法がない、という方。痛くて動けないわけではなく、フトした瞬間に痛みがスッと消えることもあるけど、何故消えたかわからない。という症状と戦っている方はいませんか⁇
ポイントは両側股関節の前側と太腿の前側、外側の不快な痛み。
一見、股関節痛と間違うこの症状『大腿外側皮神経痛』という知覚神経痛の可能性があります。人間の体に張り巡らされている神経には、まず中枢神経、末梢神経があり、そこから体性神経、自律神経に分かれます。さらに細かく分類すると運動神経、知覚神経など機能や形態の異なる神経に行き着くわけですが、この大腿外側皮神経というのは『知覚神経』にあたります。
知覚神経は求心性と言って神経が脳へと信号を送り、運動神経は遠心性と言って脳から指令を出して筋肉を動かしています。でも結局、どの神経も『伸ばされる、潰される、冷やされる』ことに弱いので、正座して足が痺れるのと同じく、知覚神経も圧迫が続けば痛みを発したり、機能不全を起こすわけです。
大腿外側皮神経はどこで圧迫される可能性があるかというと、ウエストと鼠蹊部です。
いつもキツいズボンを履いていたり、座っていることが多いと締め付けるきっかけを作りやすくなります。また意外なところで、太ってお腹に脂肪が付いたことが原因になることも。
これは一時が万事、当てはまるわけではありません。体型や神経の通路の環境(脂肪や筋肉の着き具合)などの個人差も大きいので『当たりが悪いと知覚神経を締め付けてしまう』と考えると良いかと思います。
根本的な原因を見つける
単純に腹部の脂肪が原因であることも多いので『痩せればいい』ということになるのですが、股関節痛と間違っていると一向に改善しないので、まずは原因に気づくことが最重要であると私は考えています。肥満は全てにおいて大敵ですから身に覚えがあれば生活全般を見直す必要は股関節痛であろうと皮神経の痛みであろうと共通です。ですが、その前にいち早くこの痛みから解放されるように治療しなければなりません。
直接の原因は先程も言ったように『知覚神経の圧迫』ですから、圧迫するものがなくなれば症状はすぐに改善していきます。神経の単純なところはここです。ウエストを締め付けたり、座りすぎているならそこを改善すれば痛みは引いていきます。ここを野放しにして痛み止めを飲んだりマッサージやストレッチ、鍼灸治療をしてもまず効かない、ということ☝️
と、いうことで大腿外側皮神経痛は意外と鑑別しやすく改善しやすい症状の神経痛です。ただし!知覚神経の痛みって強烈。ヘルニアや坐骨神経痛は大体足の片側から始まりますが、この神経痛は初回から両側というパターンもある、という特徴があります。足の両側ってすごく辛いもの。足が痛い、という時点でかなり辛さのレベルが上がります。おそらく2本あるからでしょうね。あと、使わないわけにいかないですから。
痛みの引き金を治療する
ウエストのゴムを緩めて終わり、というのは根治ではありますがこれでは実際痛むところに手当てをしていません。
この痛みに対してはケアしてあげないと辛すぎます。ここが鍼灸マッサージの出番。しろたえではこの痛みの治療には指圧が最適と考えています。オイル、鍼灸、ストレッチではなく指圧です。大腿部、中臀筋、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯の入念な指圧。
辛すぎるから手を当てる、ということではありません。そもそも知覚神経のトラブルですが、それによって生まれる『トリガーポイント』がとても厄介なのです。大腿外側皮神経だけが締め付けられているのだからそこだけ痛んでいれば良いものを、そこから先の太腿部やスネまで不快になるという。神経がトラブルを起こすと筋肉の運動、機能は損なわれていきますから、ここから血行不良を起こし痛みを発します。神経自体の軽い炎症もあるかもしれません。いずれにしても周りに飛び火して股関節周辺まで痛む羽目になります。
人間の体って上手くできているようでできておらず、大自然と似ているんです。炎を起こせば広がるし、耐えられる限界を超えれば崩壊して無になります。ですからそこから立て直せるかどうかは本人の体力次第だったり、時間が必要。治療というのは被害や崩壊をできるだけ小さく抑えて自然治療を助けるもの。広範囲がダメージを受ければそれだけ治る時間や体力が必要になります。
トリガーポイントというのは、痛みの引き金になっているポイント。全体を優しく摩ってもトリガーポイントが処置できていなければ痛みを取り除くことはできません。指圧や鍼灸はこういったピンポイントを処置するのに優れたツールです。足全体が辛いため、オイルマッサージなどの全身施術を受けたくなるところですが、それだとトリガーポイントの上を素通りしてしまうのであまり解決しないんです。鍼灸はピンポイントと痛みの治療に特に強いのですが、知覚神経痛だと表面が過敏になっていることもあって、鍼が刺さる痛みがいちいち体に堪える感じ。そして、鍼の刺さった痕もちょっと独特の柄が出ます。その割に指圧と効果のほどは変わらないので、トータルだと小回りが効いて痕の残らない『指圧』に軍配が上がりますね。
押す、抑えるという作業は『圧迫抑制』と言って痛みを抑える手法でもあります。抑えることで一時的に血流を抑えたり、広がりを食い止める効果、脳に痛みを伝える回路を遮断する効果があります。あとはこの大腿外側皮神経痛の特徴である部位。うつ伏せ、仰向け、横向きでも非常に鍼が刺しにくい場所です。そのため指圧の方が狙いやすいというわけ。
坐骨神経痛や股関節痛だけではない
生活の改善と患部の処置を同時に行うことで症状を改善していくのはどの疾患も変わらないですが、知覚神経の痛みというのは独特で一瞬何事か⁈と焦ってしまいます。
一番近くにあるのが股関節ですからきっと股関節の異常を疑うと思います。ですが、こんなカラクリですからレントゲンを撮っても出てきません。整形外科の先生は整形外科的な原因を突き止めるプロなわけですから、レントゲンやMRIで映らなければ『股関節は大丈夫ですよ』で終わりです。もし、このような太腿の痛みがあるようでしたらこの大腿外側皮神経痛を疑ってみても良いと思います。そして原因に当たるものを生活から取り除き、痛みの処置はしろたえへ☺︎あまり怖がらなくてよい神経痛ですが、何しろ痛みの系統としては強く不快ですから早めに気づいて処置してあげることが大切です。
今日はここまで(^-^)/
好発年齢は60代、性別は女性に多いとされています。でも、圧迫するものがあれば若くても出てきます💦