鍼治療の活躍
私が得意としている鍼治療は主に筋疲労を取り除くものですが、患者さんの中にはリストカットや抗精神薬の長期服用による副作用、薬物中毒のリハビリ中の方もいました。
何らかの症状が出て病名がつき治療に至るわけですが、こういった患者さんは辛い人生の出来事があったり、乗り越えることができずに道を誤ってしまったという背景が必ずあります。東洋医学では、そういった精神面のバランスを保つ治療法もあります。細かな問診で状態を把握してツボや経絡を使って全身の調整を行います。
私も苦手ではありますが、東洋医学の得意とする調整の治療をやってみたくて色々と勉強しました。スポーツ鍼灸整骨院に勤めていたわりに、3割は難病やこのような精神疾患の患者さんを担当していたので、そういった治療法をマスターしようとしていました。結果はどうだったかというと、私の場合は自分で考えて良かれと思うことをやった方が治療効果が出ました。抗精神薬の長期使用によるジストニア性痙性斜頸の患者さんは、最初来られた時身なりも整っておらず、おそらくお風呂にも入っていないのでしょう。ひょっとしてホームレス?と思う風貌でした。最終的には身なりを整え、働くようになり別人のようになりましたが。
それをゴールとしていたわけではありませんが、この方が訴える不眠と首の痛みを取ることにとにかく必死でした。しかし通常の首肩コリではないので、精神を整える鍼治療として督脈に一列に鍼を打ち、百会から電極を繋げて微弱の電流を流す方法があると知りやってみました。理論的にはなるほどな!と思えるので続けて様子を見ようかと思っていましたが、いまいちしっくりこないのと、主訴である首へのアプローチが少ないのではないか?と心残りがありました。
また、うつ伏せで電気を流されていて、ただでさえ筋肉が勝手に動いて硬直しているのに不快ではないか?と思っていました。そういえば、初回はまさかこんな難しい症例の方を担当すると思っていなかったので私なりの鍼をしました。鍼をして温めてしばらく放置、その後オイルで流す。放置時間がいつもより長かったかもしれません。そうしたら、寝不足で真っ黒なクマを作って殺気立っていたはずが、いびきをかいて寝ていました。
その時とても楽になって嬉しかったそうで、そこから通うことになりました。2回目以降は不眠というより首の痛みを訴えてきたので色々試行錯誤することになったのです。
海外では薬物中毒患者の離脱症状の緩和に鍼治療を取り入れています。医療ドラマの『ER救急救命室』でも、主人公カーターの薬物中毒のリハビリに鍼治療を薦める一コマがありました。精神的な苦痛を緩和して再び薬物に手を出すことのないようにしていくのだと思われますが、この鍼治療で使われる場所が耳でした。耳周りにもたくさんツボがあるので、ここを使っているのだそうです。前述した患者さんに使っていたツボで一番効果があったのも耳でした。
なかなか治療のゴールが見えにくいので私も『治ります!』とは言えませんが、鍼のアプローチを交えてリハビリを行なっていくと効果的ではないかと思います。
ぜひ、参考になさって下さい。